ビットコインの成功と闇経済、国家、銀行(Shadow Life記事・和訳)

今まで読んだBitcoin関連英文記事で一番興味深かった記事でした。
きちんと咀嚼できていない所もありますが、今までで一番具体的な文章。
このブログの他の記事も読んでみたいと思いました。

記事中ではeゴールドに関しても言及していますが、eゴールドの顛末は以前投稿したフォーブスの記事「ビットコインが通貨専制政治を防ぐ」にも顛末が書かれています。

ぼくにとっては長い文章だったので、ちょっと大変でしたが。(^^;
興味深さゆえに、挫折することなく訳せました。
何はともあれ、訳をメモ。

==============================
Bitcoinの長期的成功に必要な条件
・Necessary conditions for the long-term success of Bitcoin ≪ Shadow Life
http://shadowlife.cc/2012/11/necessary-conditions-for-the-long-term-success-of-bitcoin/
November 7th, 2012

この記事で私は「Bitcoinの長期的成功のためには何が必要とされるか?」という問いへの答えを提示する。
この問題を考察する前に我々は、Bitcoinをより広い闇経済の範疇に入れよう。

闇経済

一般的に闇経済(別名、非公式経済)とは、規制や課税などコントロールが完全にはなされていない経済活動すべてを指す。
そのもっとも単純な形は、商売で帳簿上の税金逃れを最大限に利用する一部の家族経営店を含む許可なし営業のレモネードスタンドなどで、その闇の一角にはシルクロード(ネット上の違法薬物販売マーケット)のような完全に隔絶孤立した市場がある。

その闇経済は、世界のブラックマーケットすべてを合わせると、アメリカに次いで10兆ドル規模の経済になる
多くの発展途上国でそれは既に経済の大きな部位を占め、国内総生産(GDP)より急速に成長している。(The Shadow Superpower:Foreign Policy – October 28, 2011)
より専門的な意味の闇経済用語として、暗合自由主義(クリプトアナーキズム)やアゴリズムが用いられる。
アゴリズムとは革命的自由市場無政府主義だ。
自由市場無政府主義社会では、法律とセキュリティは政治制度のかわりに市場行為者により提供さるだろう。
アゴリストは、状況は政治改革によって発展出来ないと理解している。
かわりに、それは市場プロセスの結果として生じるだろう。(agorism.info
暗合自由主義(クリプトアナーキズム)の紹介として、1992年5月、Timothy Cにより発表された「クリプトアナキスト宣言」から以下を引用する:

コンピューター技術は、完全に匿名の方法で個人やグループが相互に交流しコミュニケートするための能力を今にも提供しようとしている。
[・・・]
これらの発達は、課税と経済相互作用をコントロールする能力や非公開情報を守る能力などの政府規制の本質を完全に変え、さらに信用と世評の本質をも変えるだろう。

ひとつ注意すべきは、暗合自由主義(クリプトアナーキー)は哲学的ユートピアではないが、破壊的技術の存在下で生命と社会を形作る試みだということだ。
対応する技術は既に生まれ、我々は大きな分水嶺に直面している。
我々は完全な監視国家か、あるいは暗合自由主義(クリプトアナーキスト)天国(libertopia)のどちらかに住んでいるだろう。

そうなると、Bitcoinはこの状況の中でどんな役割を果たすのだろうか?
自由な社会は自由市場を必要とし、自由市場は健全な通貨を必要とする。
Bitcoinは優れた特性を持つ通貨だ。
それは匿名で、そのシステムには凍結勘定はなく、代金請求差し戻し(クレジットカードを受理した商店が被る大問題)を許可すること事なく、その送金は安くて迅速だ。
そのため、少なくともB2B(※Bitcoin to Bitcoin?)処理のため、送金の必要から高度に発達した経済であるゆえに、物々交換や現金限定経済と比較してBitcoinの使用は大きな利点を持つ。

Bitcoin長期的成功のための三つの仮説

では、Bitcoinが長期的に成功し続けるためには何が必要だろうか?
要するにそれは、国家や銀行、店頭取引を必要としない。
より詳細な三つの仮説:

  • Bitcoinコミュニティーは、Bitcoinに合法性(法的義務)を得ようとするべきではなく、我々はコミュニティー内の対立の解決を国家に依頼すべきではない。
  • Bitcoinコミュニティは、従来からある銀行制度との相互運用性に焦点を合わせるべきではない。
  • 広範囲に渡って店頭取引(OTC)Bitcoin両替機が利用出来るということは、Bitcoinの長期的成功と我々のさらなる自由にとって非常に重要だ。

この仮説の背景にある根拠を説明する。
一般的で当たり前の常識における公共選択論(※公共選択論:日本版WikiPedia)は、人々が利己的な思惑からそれを行うと述べる。
(※公共選択論:政治家や官僚、政党、圧力団体といった政治におけるアクターの活動を、 自己利益を追求する経済活動として分析する理論。)
これは政治家や銀行家、警察官を含む。
人々はそれぞれ関心のあることを行い、あなたは自分の関心が彼らの関心と同じだと考えることが出来ない。
それらは普通同じではない。
この単純な事実を理解することは非常に重要だ。

人々が公益のために働いている時、彼らというものはない。
おそらく献身的に他者を支援している人々でさえ、実際は彼ら自身の価値体系に従って生きるために支援している。

国家はいらない

国家とは、その市民から資源(通常は金銭)を絞り取る強制力の領域内独占だ。

  • 主に戦争と監視機構のための資金調達。
  • 残りは、自由市場においてより安く提供可能ないわゆるサービスを与えるための使用。

 
これらのサービスは、国家としての存在正当化として通常利用されるが、その本当の存在理由は国家通貨受領者が手に入れることが出来るボロ儲けだ。
お金は、生産的な市民から課税と通貨供給独占権(あなたがたのお金はインフレーションにより価値が下がる)により奪われる。
そのため、無知な大衆に気づかれにくいという点で、後者の戦略の方がよい。

公共選択論から得られる本質的関心の結論とBitcoinシステムと国家の制度とを結び付けようとした場合、多くの問題が生じる可能性が見える。
Bitcoinはインフレーションを防ぎ(いったんすべてのコインがマイニングされてしまうとインフレーション-通貨膨張-はない)、脱税を支援する(規制と取り締まりは難しい)。
それは国家財政の根本を突くので、国家の存亡が危機に晒される可能性がある。
したがって、ひとたびそれが理解されれば、国家はBitcoinと激しく闘うことになるだろう。
私の意見としては、国家がBitcoinを受け入れると考えることはまったくもって馬鹿げている。

最もあり得るシナリオは、国家がBitcoinを完全に閉鎖しようとすることだ。
それが可能でなければ、国家はそのシステムの中にもっと容易に本人確認(know your customer -KYC)の実装が可能なようにBitcoinを変えようとするだろう。

ひとたび国家がBitcoin両替商やビジネスをこれ以上取り締まったり、Bitcoin財団のような関係者がBitcoinがより規制されたり迎合するために国家機関との共同作業による状況改善を試みた時、Bitcoinコミュニティーがどんな議論に至るのか楽しみ見守ろう。

そして、何故BitcoinコミュニティーがBitcoinのために合法性(法的義務)を得ようとするべきではないか、そして何故コミュニティー内の対立解決を国家に依頼すべきではないか、という私の意見はこれが示している。
このすべてがBitcoin生態系に向けて、より一層望まれていない注目を集めるよう駆り立てるだろう。
現行のBitcoin容認に関しては、国家の利己的な自己利益が法的義務と規制を妨げているのだ。

歴史的教訓:eゴールド

eゴールドは、過去繰り返し批難されたジョージ・サンタヤナに関する出来事、それを思い出すことができない人々に貴重な歴史的教訓を提供する。
eゴールドは1996年~2009年の間に存在し、金所有による即時送金を可能にしたデジタル通貨だった。
2008年には500万を超える口座数を発表した。
繁栄する収益構造がeゴールドの周りにはあった。
結局、両替企業は規制問題により攻撃され閉鎖させられた。
eゴールド自身も、マネーロンダリングと無許可送金ビジネスにより起訴された。
eゴールド自身が以前から該当するライセンスを得ようとしており、その必要はないと言われていたにも拘わらずその起訴は起こったのだ。
現在のBitcoinの状況に似ていると思えないだろうか?
諸君、このゲームは八百長だ!
あなた方がルールに従ってプレイしていても勝つことはできないのだ。

銀行はいらない

銀行は部分準備銀行制の主な受益者であり、中央銀行から安く貸付金を借用できる。
それらはもっとも厳しく規制された産業のひとつとして運営され、結果として著しい競合の無さと巨大な参入障壁をもたらしている。
これが、例えば取引やクレジットカードの手数料から多大な利益をもたらしている。
認可手続きが競合者数を減らし結果的に多額なコストを生むので、PayPalやWestern Union、Money Gramのような金融サービス提供者もまた非常に高額な手数料を設ける。
少ない収入の外国人労働者が、そのような高額手数料サービスを利用して故郷に送金する大口顧客であるという基盤は、貧困層に対する実質的な税金だ。
Bitcoinはこの利得を脅かし、取り締まりの危険をもたらす。
したがって、Bitcoin両替企業は競合する金融機関により攻撃されるだろう(その一例としてTradeHillが思い出される)。

広く成功したBitcoinシステムは、確立した金融業界の自己利益に反し、長期にわたる該当する規制の挑戦に取り組むことは彼らにとって意味をなさない。

Bitcoin経済が従来の銀行制度に依存するなら、それは失敗することが運命づけられている。
Mt.Gox(それは現在Bitcoin取引全体の80%を担っている)が突然閉鎖させられたら、何がBitcoin経済に起こるかちょっと想像してみよう。

私の見解では、これが第2の仮説を示している。
Bitcoinコミュニティーは、従来の銀行制度との相互運用可能性に集注すべきではない。

店頭取引(OTC)のケース

我々は今自己利益の見地から、国家と従来の金融業界がBitcoinに対して当然反対することを立証した。
Bitcoin経済の長期的安定と成功を確実なものにするため、我々は取引所と店頭取引(OTC)両替機ネットワークとが完全に分離したシステムを必要とする。
ふたりの人間が対面で現金(または金、銀)用にBitcoin取引を行う場合、店頭取引(OTC)両替が生じる。
OTCは、メールや電信送金での送金ではない。
そのような広範囲におよぶOTC両替機ネットワークは、それが大量に配置され銀行システムを完全に省略するため、国家の攻撃に対して最も回復力のあるシステムとなる。

この推論が第3の仮説を支持する。
Bitcoinが長期的に成功し、我々にさらなる自由をもたらすために、広範囲にわたって利用可能なOTC Bitcoin両替機は非常に重要だ。

安全で専門的なBitcoin OTC取引“の手引きがOTCでの実際的アドバイスを与えるだろう。
この記事の内容は、ロンドンでの2012 Bitcoin会議で発表された。[Bitcoin in the Counter-Economy:PDFファイル]

Popular Posts:

4 comments

  1. しろくま より:

    こんにちは。
    ビットコインって、mtgoxに預けておくこともできるけど、自分のPCにbitcoin-walletをインストールして、そこのアドレスにコインを保存しておくことも出来るじゃないですか。
    その状態で、HDDが逝ってしまったら、コインも回収不能になってしまうんでしょうか・・? 心配です。

    • puru より:

      こんにちは、しろくまさん。

      >HDDが逝ってしまったら、コインも回収不能になってしまうんでしょうか・・? 心配です。

      なるほど、そうですね。
      考えていなかった。(^^ゞ
      再度インストールしたら、別アカウントでWalletができてしまう訳だし。

      Windowsシステムドライブの「Application Data」内にある「Bitcoin」フォルダ内の
      トランザクションデータ以外をバックアップして戻す、っていうのは効くのでしょう
      か・・・って、ダメそうな気がするけど。

      ちょっと調べてみますね。

      • れのま より:

        Bitcoinフォルダ内のwallet.datか中身全部をバックアップして
        新しいPCの移すのは1度やりましたよ
        トランザクションデータもバックアップするとあとからまた最初から受信しなおさないで済んで便利です
        容量は大きいですが

        • puru より:

          こんにちは、れのまさん。
          いつもありがとうです。m( _ _ )m

          >Bitcoinフォルダ内のwallet.datか中身全部をバックアップして
          >新しいPCの移すのは1度やりましたよ

          おぉ、wallet.datだけでもいけるんですね。
          すごい^^

          >トランザクションデータもバックアップするとあとからまた最初から受信しなおさないで済んで便利です
          >容量は大きいですが

          トランザクションデータの同期って、初めてだとかなり時間かかりますよね。
          なるほどです。

          ところで、試しに「Blockchain」(https://blockchain.info/ja/wallet/)
          にWallet作ってみました。
          ブラウザでアクセスするってセキュリティ的にどうなんだろ、ていう気もしま
          すが、とりあえず試してみようかと。
          クラウドみたいな感じで使えるので、ハードを選ばずにどこからでもアクセス
          出来るっていうのはお手軽ですが・・・。

          あとは、いちいちトランザクションデータを同期させる手間がいらないんじゃ
          ないかという想像。(未確認)
          ともあれ、しばし試してみる予定です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">